オーケストラと会社
以前ファーストリテイリングの柳井社長がオーケストラと会社という組織は似ているという話をされていたというエントリを書きましたが、この本はまさにその話と重なっています。
- 作者: 小松長生
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/09/09
- メディア: 新書
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内容については本書を読んでいただければいいのですが、その中に紹介されている一説がこの本の言いたいことをよく表していると思ったので、書いておこうと思います。それは歴史に残る偉大な指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤンの言葉です。
「私がオーケストラに与えうる最大の害は”明確な指示を与える”ことである」
思わず、これには唸ってしまいました。オケメンバーの演奏スキルや表現力を十二分に発揮させ、かつそこに自由な想像力あふれるアンサンブルを作り上げるには、指揮者の明確な指示は時としてその邪魔になることがあるわけです。指揮者が提示するあたらしい楽想や世界観、それに触れていい音楽を作りたいという情熱を持つ演奏家を束ねるには、指揮者には相当の知識、経験、マネジメント力、コミュニケーション能力、そしてリーダーシップが求められるのですが、その事実を凝縮した含蓄ある言葉だと言っていいでしょう。
私marumoも吹奏楽をずっとやっていて、一時期本当にうまいバンドに入っていたことがあるのですが、その時感じたのは厳しい練習の中にも、指揮者のリーダーシップの中に意志があり、かといってその指揮者の言うなりではなく、むしろ他のあまりレベルがそこまでうまくないバンドよりも「自分があたかも解放されている、自由である」と思える瞬間がはるかに多かったことです。確かにその指揮者の方は要所要所は抑えつつも、基本的には「私たちが吹きたいように思いっきり唄えばいい」といつもおっしゃってました。結局は自分の楽器、そしてバンド全体でどういう唄を歌いたいのか、そこをいつも自分たちで考えながら吹くように導いてくれたのだなと今更ながら思います。
会社も同じだと思います。トップは下の人たちが自由にのびのびと仕事をするのを、でーんと構えて、その人たちにゆだねながら、そして時には的確にかつ明確すぎない指示をすることで、会社を引っ張っていく、そんな存在であるべきだと近頃思うのです。